大人のための物理
                         2019.8.19改訂版  平井則行
本格推理小説作家の島田荘司氏が「アルカトラズ幻想」という本を書いています。この中に、恐竜が1億年以上も繁栄できたのは、当時の地球の自転速度が現在よりも速かったので、遠心力のおかげで体重が支えられ、翼竜も本来なら飛べなかったはずだが、重力が弱かったので飛べたのだという”新説”を述べています。そして、6500万年前の彗星落下の結果、急激な寒冷化で滅んだのではなく、彗星落下の結果、地球の自転速度が落ち、遠心力が激減して恐竜は滅んだのである、とのこと。

 この新説は”目から鱗”もので、なかなか物理屋の気を引きました。そこで、この新説を検証しようと思い立ち、いったいどれほど自転が速ければ、遠心力で重力が弱くなってくれるかという計算をしてみました。実は、私は物理の教師でしたので、昔、授業でこれをやったことがありました。そのときの記憶をたどると、1日が1.4時間ほどで廻ると、赤道地方では万有引力と遠心力が打ち消し合い、重力がゼロになります。現在の1日24時間という遠心力は、万有引力の0.3%しかありません。そのぐらいの記憶はあったのですが、恐竜が体重を支えやすくなるほどの自転速度は最低どれくらい必要なのかという詳細を知りたくなったので、一念発起、老脳にむち打ち、Delphiでプログラムを作ったと思いねえ。

 走らせた結果はいかに! なんと、体重が半分になるには2時間で廻らないといけないということが解りました。これは、相当なものです。
1.地球の自転による遠心力の計算
地球の自転による遠心力(exeファイル)
☆リンクを選び、右クリックして「新しいタブで開く」とやればダウンロードできます。そのexeのファイルをクリックします。実行出来たら、ますは地球の質量を計算してみてください。その値が有効数字3桁で厳密な値に近似できていることが確認できるでしょう。右の天体衝突の密度や直径や速度を適当に変えてやるたびに計算結果が自動的に計算されますので、好きなように変えてみてください。

注)この実行プログラムは"http://kurumi.bitter.jp/Jiten.exe/"ですが、右クリックで「新しいタブで開く」とやると、破棄するボタンがありますが、その右に^マークがあり、これをクリックして、継続とやると実行出来ます。別にウイルスではなくてもWindowsは”exeファイル”を危険視して、ダウンロードさせないように誘導するようです。簡単に諦めてはいけません。めげないようにね。d(⌒o⌒)b
 尚、Zipの方はとりあえずLhaplusという無料ソフトがありますので、そちらをインストールすれば、右クリックでメニューが出てきますので解凍が出来ます。ダウンロードしてからの方が何かと安心で確実でしょう。IEの掲示板では少し警告が緩く、実行しやすいです。FBやWindowsのSNSでは.exeのファイル形式は危険だと見なされ、検閲が厳しいようですね。当然かも知れません。IE経由の私の掲示板では緩い警告で、exeファイルでも即実行出来ます。ちょっと、不思議です。MSはGoogleをなぜか推奨しており、IEだと何かと問題が起きます。FBの画面がIE経由だと滅茶苦茶になり、MPEGファイルが実行出来ません。IEはマイクロソフト製なのに、とにかく変です。



解説

 このプログラムはDelphi(CommunityVersion 10.3)で書かれており、当然、計算方式はいわゆる解析的な積分や微分は使えません。積分などは、一度、区分求積法に変換してfor i:=0 to Re do begin〜end;文で計算しなければならないと言うことです。
 デジタルの計算ですので、連続量の量子化が必要です。たとえば、地球の質量を計算するには、深さを100km単位に量子化して、密度も深さで区切りif 文で与えてやります。実際には深さの関数で連続量ですが、このようなディスクリートに単純化したモデル計算をするわけで、実際の地球の質量と照らし合わせて密度のモデルを設定してやる必要がありました。モデル計算はつまり近似計算です。有効数字が3桁合えばよしとします。
 今回、地球質量をその精度で再現できましたので、計算方法は正しいものと判断しました。同じアルゴリズムで角運動量を計算しています。その結果、地球の自転の角運動量が概略わかりました。解析的に角運動量を計算することは不可能ではありませんが、実際にはかなり面倒です。デジタルに計算できたことで、誤差はあるかも知れませんが、よしとします。目的は、小惑星の衝突による地球への影響を予測するわけですから、厳密な計算など、もとより必要ではありません。だいたいどのようなことが起こるかがわかれば良いのです。そもそもが、どのような大きさの天体が、どのような速度で落下するかなどわかりませんから、概略で良いのです。それでも、計算機による結果解析は有力でした。比較的短時間に結果がわかるからです。

 まず、遠心力に関してですが、わかったことは、自転の遠心力による万有引力の補正、すなわち重力が、1日を約1.4時間だとすると、赤道では打ち消し合いがゼロに成り、約2時間では半分の重力になるという結果でした。2時間というのは直感的には意外でして、ゼロになるのが1.4時間というのは簡単な解析的な計算で高校レベルでも知られていますが、半分になるのが2時間というのは、普通、授業でもそこまではやりません。まして、途中の値となるとまったく不明でしょう。もっとも、遠心力が速度の2乗に比例するので、1.4の2乗、2時間というのはすぐにわかりますが、このコンピュータ計算はそういう途中の値が簡単にわかるという意味で、俄然、威力を発揮し始めます。あっという間に結果が出ますので、そこから色々な思索、推測、知見が生まれます。
 
 現在の地球の角運動量の値から、相当大きな天体が、ある程度高速で落下しないと、自転速度はそう簡単に変わらないのではないかという予測もされました。

 プログラムが一応完成したので、現実的な数値を入れて走らせてみました。ユカタン半島に落下して、恐竜を絶滅させた彗星を例に取り、サイズは1.5km、速度を20km/sと設定しました。すると自転が有意に激変します。島田氏の話は、結構、真実味がありました。ただし、プログラムにもラジオボタンで用意しましたが、落下の効果は地球の軌道の外側と内側で正反対の結果が生まれます。落下する彗星は小惑星帯から来たと仮定すると、公転面を地球を追跡する方向から落下して来るとしても、軌道のちょっとしたズレから、落下地点が地球の昼側と夜側では自転を止める方向になったり加速する方向になったりします。

 もしかすると、恐竜が絶滅する事件が起こったのかも知れません。 

 太陽系の成り立ちを考えると、本来、星間ガスが集まって太陽や惑星や小惑星も出来ているので、皆、同じ程度の自転速度を持っているはずです。その場合は、木星や土星の自転がだいたいの基準値となります。ところが、金星は自転速度や自転方向が逆(自転周期は116日と18時間)だということで、これは何かあったに違いないと言うことになりますな。天王星も自転軸が90度横倒しです。これらは天体衝突で説明されなければなりません。科学者は、絶対的に証拠をつかまないと原因不明と言い、責任逃れをするのがこれまた作法です。全く予想も付かない原因で説明されてしまうと、権威を喪失するからです。想定外という言葉が便利ですね。ま、少なくとも理系の人間は、多少なりとも説明責任があるはずで、黙っていちゃあダメでしょう。文系の方々は、言いたい放題で良いと思います。ですが、少なくとも理系の学問の府を出たものとしては、責任を持ちましょう。私は、小惑星群の存在も、なんぞあったに違いないと思っています。隕石に、石質隕石と隕鉄という2種類が発見されていることはご存じの通り。隕鉄って、金属ですよ。金属は惑星の内部にしか存在しないはずです。地殻・マントル・コアのコアの部分ですね。だから、宇宙空間に隕鉄のようなものが漂っていると言うことは、大きな惑星が爆発して粉々にならないと存在するはずがないのです。爆発する原因は、重い元素ほど中心部に沈むという、溶けた内部を持つ惑星の層状構造のことです。このとき、一番重い元素は何でしょう。一番かどうかは別にしても、ウラン235は中心部に集まっていき、臨界量を超えてもいいですね。そうすると、惑星爆発です。火星と地球の中間地点で廻っている小惑星帯はそのようにして、地球ぐらいの惑星が爆発した残骸だと考えて悪いわけありません。ですが、地球科学の専門家は違うといいます。隕鉄も、惑星内部ではなく、宇宙空間で生成したのだと。これは、同じ元素同士がお互いに引き合って集まる性質があるから、一理ありますが、それでは、石質隕石の場合、逆に不自然です。酸化シリコンのようなものが、凝縮力で集まるということが、不自然なのです。これは物性理論的な意味での凝縮ではありません。単なる、重力による集結です。極低温の宇宙空間では溶けてくっつくと言うことはありません。太陽系の誕生時のような、微惑星同士の衝突で起こります。隕鉄ですが、カットするとウィドマンステッテン構造という模様が見られます。このような微細構造は溶融状態を経た後にゆっくりと冷えていかないと生成されません。急激な冷却では、金属ガラスのような、ランダム系となります。それと、鉄より重い元素は、超新星爆発時の高い圧力と温度で生成されるのです。137億年の年月で起こった超新星爆発の結果ですから、地球に半径3.6万kmという規模で鉄ニッケル合金があると言うことも、少しは考えておかないといけません。地球が爆発すると、いっぱい隕鉄が宇宙空間にばらまかれるでしょう。放射性物質による惑星内部の熱の蓄積による溶けた結果の層状構造は、じつは、大変なことなのです。

  

 上の写真は最新の金星の表面の写真です。これについては後で触れます。

 話を彗星の落下に戻すと、今回の計算結果で、十分自転の遠心力は変化しますが、やはり、落下時の大爆発による気象変化というのも重大で、核の冬みたいな気象変化が起こり、これが長期間続けば、生命体は大打撃です。ただ、気象変化は2,3年すると回復しますが、遠心力の変化の方が長期にわたり決定的なダメージを引き起こしますね。果たして恐竜が絶滅したのは、どっちが主原因なのか…。科学のミステリーはますます謎が深まり、想像が膨らみ、好奇心や探究心を刺激してくれますね。やっぱり、ボケーッと生きていてはダメなんだと反省します。

 尚、落下速度ですが、これは全くの不確定要因です。現在、ボーデの法則が予測する2.4あたりに相当する火星と木星の間にある小惑星は、最大のものでも火星に捕まったとされる衛星フォボスとかダイモス以下の小さいものでして、太陽系誕生時のような大規模の衝突はもう起こらないのですが、これら小惑星同士の衝突により軌道が急変して、地球へ落下してくる軌道に入るものが出てくる可能性はゼロではありませんし、その初速度も予断は許されません。結構、速いものも落ちてくることは理論的にもあり得ます。スイング・バイというメカニズムで、一度、木星方向に行っても、加速されて地球方面へ高速に飛び込むこともあります。その場合は、もしも運が悪ければ、地球に落下してドラスティックな自転変化が起こることでしょう。自転が止まってしまったりしたら、大変なことになります。金星がその前例です。金星は表面温度が摂氏460度で350km/hの風が吹いているそうです。自転周期は117日ということですが、完全に止まったら、ひっくり返されない餃子のような、片面だけ焼け焦げた状態になります。太陽に向いた面は海が蒸発し砂漠と化し、夜側はその反対に凍り付いた白い氷の世界です。これが安定して続くかは大いに疑問ですが。やはり、金星のように、温度差によって、嵐が吹き荒れるでしょう。

 最新の情報では、表面の地形変化がつい最近に起こったらしいことがビーナスエキスプレスという観測機のデータから解析できたということです。金星の自転周期の117日というのは異常なことです。それも、小惑星落下による自転変化が起こったのが最近なのかも知れないのです。



右の地球が左の金星のようになる日が来るかも知れない。恐ろしいですね。

 しかし、地球の内部原爆(前述)も彗星落下も、いつ起こるかも知れないし、起こらないかも知れないので、要らぬ心配するのは愚かなことですが、予測が付くものなら緊急避難の対策も考えておくのは無駄ではありません。でも、かけがえのないオアシスのような地球は、そう考えてみると愛しいですね。このような惑星は滅多に生まれないのですから。

その後、プログラムをさらに改良し、計算も精度を上げました。そして、実は、もう一つ発見がありました。

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地球の自転による遠心力(Zipファイル)